「ユネスコ教育勧告」普及のための教材開発及び教員研修モデルの構築
(文部科学省「令和6年度 SDGs達成の担い手育成(ESD)推進事業」)
現代教養学部教育学科の永田佳之教授が代表者を務める「『ユネスコ教育勧告』普及のための教材開発及び教員研修モデルの構築」が、文部科学省による「令和6年度 SDGs達成の担い手育成(ESD)推進事業」(※)に、私立大学では唯一採択されました。
- ※文部科学省の「令和6年度 SDGs達成の担い手育成(ESD)推進事業」は、国内の教育現場等における持続可能な開発目標(SDGs)の達成の担い手を育む多様な教育活動(ESD)を支援する事業です。
1. 趣旨?目的
気候危機やパンデミック、戦争などの地球規模の問題が絶えない昨今において、平和と持続可能性を標榜した「ユネスコ教育勧告」の効果的な活用は日本でも喫緊の課題である。
特に「14の主導原則」に示された「公共善」「ケアと連帯の倫理」「知の共同創造者」等は注目されながらも、教師にとっては決して理解し易い概念ではなく、ともすれば机上の空論に終始してしまう可能性もある。また「12の学習成果」の中にも「人間以外の生命の尊重」や「変容型スキル」など、どのように児童?生徒に伝えていけばよいのかを模索するであろう教師が現れることが予想される。
この現況を乗り越えるために、本事業では申請団体及び協力団体が蓄積してきた知見を生かし、現場の教師に活用してもらうための教材を作成し、それを活用した教員研修及び教員養成を都市部及び地方において試み、他国にも参照してもらえるようなモデル事業を目指す。
2. 実施概要
2023年11月のユネスコ総会で採択された「平和と人権、国際理解?協力、基本的自由、グローバル市民、持続可能な開発に関する教育勧告」(以下、「ユネスコ教育勧告」と略記)の中の「14の主導原則」に焦点化した、勧告文の普及のためのカード型教材(案)を作成した(対象は主として教職員等の成人)。
その作成過程において、試験的に教員研修やNPO職員、保護者、教育委員会職員等を対象にした研修を繰り返し試みることによって、より質の高い教材に仕上げた。
さらに「14の主導原則」とカード教材のキーワードのテーマのもとにイベントを開催し、その普及を図るために、紙媒体とあわせて全国どこでもダウンロードの上、使用できるようにデジタル版も作成し、現職教員等を対象とした研修プログラムの普及に尽力した。
活動地域
活動地域?場所としては、申請時の予定どおり、静岡県内及び東京都内のユネスコスクール、長崎県内のSDGs未来都市認定の壱岐市であった。さらに、学校のみならず、地域での可能性をより広げていく必要性が強調されたために、神奈川県内のフリースペース(不登校児童?生徒を主な対象にした「居場所」)も職員研修として加えた。
3. 具体的な取り組み
第1に、ユネスコ教育勧告の熟読を通して勧告文全体を理解し、必要に応じて英語以外の国連公用語も参照しながら、「14の主導原則」の個々のエッセンスを意訳し、さらに意訳を補完するために3つの問いを作成して42の問いを設けた。これらをカード型教材の表面として、裏面は原文(英語)と邦訳、さらに必要に応じて参考情報のQRコードを盛り込む形で掲載した。これらをもとに2025年1月に開催した公開イベント「私たちがつくるユネスコ教育勧告:コンヴィヴィアルから開く14の扉」では、学校の教員や地域での活動家など専門家4人を招聘し、カードの抽象的な鍵概念がいかに学校等の現場で具現化されているのかについて語ってもらい、ユネスコ教育勧告の日本での可能性や課題について広く共有した。
事業で作成したカード型教材は予想以上の反響を呼び、デジタル版が公開される前から各地で使用されるに至った。各地で習得が期待される資質?能力はESDで主唱されているものと重なり、創造的思考、協働的思考、批判的思考等である。「14の主導原則」を用いた教員等の研修を通して養われていたのは同勧告の「12の学習目標」での強調点とも相当に重なる。このことは勧告の14原則と12目標とが有機的に連動していることの証左であり、後者の教材化の可能性を示唆していると言える。
なお、研修を通して満足度に関するアンケートをとった。参加した教職員等の165名のうち、「大変に満足した」は51%、「満足した」は41%、「まあまあ」は8%、「やや不満」と「大変に不満」は0% であり、9割以上が肯定的な評価であった(下図参照)。終了後の振り返りにおいても「生徒たちにも授業で実施したい」や「総合学習の時間でも活用したい」等の声が聞かれ、ユネスコ教育勧告の有効性や可能性を実感できる結果となった。
4. 本事業の成果
(1)カード型教材
(2)イベント「私たちがつくるユネスコ教育勧告:〈コンヴィヴィアル〉から開く14の扉」
(参考)
本事業の問い合わせ先
聖心女子大学 企画部企画課
TEL: 03-3407-5349(直通) 03-3407-5811(代表)
E-mail: kikakubu@u-sacred-heart.ac.jp